東京都写真美術館モノクロ銀塩プリントワークショップに参加してみた【初めての紙焼き】

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フイルムカメラを始めてからずっと、現像したフイルムはお店でデータ化してPCで鑑賞していました。

ただ、せっかくフイルムで撮っているので、プリント(デジタル印刷ではなく印画紙へのプリント)して鑑賞したいと思っていました。しかも、プロラボなどのお店に依頼する方法もありますが、一度自分でプリントをやってみたいと思っていました。

そんなときにちょうど、東京都写真美術館でモノクロ銀塩プリントを体験できるワークショップの開催を知り、ここぞとばかりに申し込んで体験してきました。(実際に体験したのは少し前のことです)

しちみ
しちみ

ついに自分で印画紙にプリントできました!

今回はそこで体験してきたことを皆さんにお伝えします。

この記事でわかること

・モノクロ銀塩プリントの流れとコツや注意点
・写真美術館のワークショップについて

それでは、カメラ歴15年、フォトマスター1級のしちみがお送りします。

▼フイルムカメラとデジタルカメラの写りの違いはこちら

1.東京都写真美術館モノクロ銀塩プリントワークショップとは?

恵比寿にある東京都写真美術館で定期的に開かれているワークショップです。

写真文化を広げるという趣旨のもと、初心者向けのワークショップとなっており、全く知識が無い状態でも丁寧に教えていただき、問題なく仕上げることが出来ました。

現像済のフイルム(ネガであればカラーでも白黒でも可)だけ持参すればよく、印画紙や薬品などそれ以外の消耗品はすべて用意されています。

それでいて2時間4000円というリーズナブルな参加費で参加できました。

コロナ以前は頻繁に大人数で実施されていたようですが、参加したのはコロナ以降で2年ぶりの再開の時点。人数も絞られており、その分みっちり体験できました。

今後も定期的に開催するそうなので、ぜひ情報をチェックしてみて下さい。

2.モノクロ銀塩プリントワークショップに参加

当日のワークショップの流れを順を追ってお伝えします。

今回写真を撮ってよいとのことでしたので、たくさん撮ってきました。

全体説明

まず広い作業室で当日の流れの説明がありました。

このときにどのコマをプリントするか選びます。

説明を聞きながら初めてプリントをやったので、2時間で2コマが限界でした。

講師の先生がネガキャリア(フイルムを固定する専用の台)の使い方を説明されています。

これがネガキャリア。引き延ばし機(露光機)の種類によって形が異なるようです。

フイルムを挟んだところです。

フイルムは表面を触って指紋を付けないように注意します。

挟んだ後はブロアーでゴミやほこりを飛ばします。

露光時間で明るさ、フィルターコントラストを調整します。

現像済フイルムの濃さによってどの設定で露光すればよいかが毎回違うので、最初に段階露光をして適正な設定を見極めてから最後に本番露光をします。

これはその設定を色々振って出来栄えがどのように変わるかを見せていただいたサンプルです。

説明を一通り伺ったところで、いよいよ暗室に入って露光と現像の方法を学んでいきます。

引き延ばし機使い方説明

こちらが暗室です。

真ん中に現像用の流しがあり、その両脇に引き延ばし機が並んでいます。

2種類の引き延ばし機があり、全部で10台以上はありました。

他のラボでプリントをされたことがある参加者の方から伺ったところ、ここまで機械が揃っている場所はなかなかないそうです。

今回使った引き延ばし機です。

アメリカのベセラー社製でした。(手振れしていてすみません)

結構な大きさで、これを自宅に置くのはなかなか難しいなと思いました。

先ほどフイルムを挟んだネガキャリアを、このキャリアに置きます。

そのあと、コントラストを決めるフィルターを設置します。

0番から5番まで1/2段ごとに用意されています。

1点注意として、4番以上は露光時間を倍にする必要があるとのことです。

私は最初これを知らず、1度失敗して印画紙を無駄にしました。

4番以上は露光時間を倍にする、ということを覚えておいてください。

その次に、ヘッド部分を上下に高さ調整して、プリントする画像の大きさを決めます。

その後、露光レンズのピント合わせをします。

厳密にピントを見極めるため、この拡大鏡でフイルムの粒子がちゃんと解像するかを目視で確認しながら、上の写真左側のノブを回してピントを合わせます。

これが最初結構難しくて、どれがフイルムの粒子なのか見分けがつきませんでした。ただ、一度見わけ方が分かるとそれ以降は簡単に見つけられました。

次にレンズの絞りを合わせます。ピント合わせまでは見やすくするために解放のF2.8にしておくのですが、露光段階でフイルムの種類に合わせて絞ります。

今回はカラーフイルムの場合F5.6、モノクロフイルムの場合はF8まで絞りました。(ただ私の持参したフイルムが濃かったので、最終的にはF4まで開けました)

ここまで設定出来たら印画紙をイーゼルマスク(印画紙を載せる台)に挟みます。
下図の黒枠の下に印画紙を挟んで露光位置を決めます。
露光ヘッドとイーゼルマスクの位置は手で動かして調整するため、位置は結構アバウトです。

露光時間をこのタイマーで決めます。
3つダイヤルがあり、上から10秒単位、1秒単位、0.1秒単位です。
実際は1秒単位までしか使いませんでした。(0.1秒単位で厳密に調整することがあるのだろうか)

ダイヤルで露光時間を設定したら、その下の赤いボタンで露光開始です。

ちなみにその上の黒いボタンは先ほどのフォーカス設定用の常時露光スイッチです。印画紙を置いて間違えてこのボタンを押すと、おじゃんになってしまうので要注意です。注意しておかないと間違いやすく、実際に間違えた受講生の方もいました。

以上が露光の流れです。

ちなみに今回、ベセラー社の引き延ばし機を使いましたが、他にも日本のラッキーという引き延ばし機もありました。いまはケンコーに合併された藤本写真工業という会社が作っていたものです。

現像の流れ説明

ここから現像です。
現像→停止→定着→水洗→感想の流れで行います。
このように流しの中においた3つのバットの中にそれぞれの薬品が用意してあります。
水洗は流水中で行います。

レシピ
現像:中外写真薬品マイペーパーデベロッパー 90秒
停止:フジフイルム富士酢酸 15秒
定着:中外写真薬品マイフィクサー 60秒

竹串で素早く印画紙を沈め、薬品がしっかり表面に接触するようにします。
処理時間は多少ずれても仕上がりに大きな影響はなく、ある程度アバウトでもOKとのことでした。
水洗まで行ったら暗室外に持ち出して出来栄えを確認後、乾燥させます。

ちなみに、実際の作業時は印画紙が露光しないように下記のようにほのかなオレンジ色の光(セーフライト)の中で行います。

特に引き延ばし機の扱い方など、慣れないと混乱するので、照明がついているうちに何度か操作の練習をするとよいです。

暗室の入り口は露光事故が起こらないように、2重のカーテンで閉め切られています。

両方同時に開けないよう、出るときと入るときは声掛け(出ます、入ります等)をして行う、というのがルールでした。暗室独特のルールですね。

外に出した後も数分水洗を行った後、乾燥させます。

洗濯ばさみで吊るしてもいいのですが、時間短縮と反りを強制するため、このような専用の乾燥機を使いました。この機械も写真専用の乾燥機のため、需要が無くなっており、もう作っているところがない貴重な装置だそうです。

段階露光

ここから実際に自分のフイルムを使って、プリントの実習に入ります。
最初に設定を決めるための段階露光を行います。
印画紙を黒い紙で覆って少しずつずらしながら、多重露光を行って露光時間を調整します。

印画紙はこちらが用意されていました。

実際に段階露光を行った画像です。

フィルター:3.5段
レンズ絞り:F5.6
露光時間:左から24秒、20秒、16秒、12秒、8秒、4秒

現像した画像を見てみて、一番長い24秒でも色が明るすぎるように感じました。
持参したネガフィルムの色思ったより濃かったようです(光が届きにくい)
そこで講師の方にアドバイスを頂いて、思い切って絞りを1段明け、さらに露光時間も増やしてみました。

2回目の段階露光の結果です。

フィルター:3.5段
レンズ絞り:F4
露光時間:左から32秒、28秒、24秒、20秒、16秒、12秒

左の方はさすがに暗すぎますが、真ん中の24秒、20秒あたりが空や煙の明るさと、
森の暗さのバランスが良く見えます。
最終的に右から3番目の20秒に決めました。

本番露光

最後に段階露光で決めた設定で本番露光を行います。

本番露光の結果です。

フィルター:3.5段
レンズ絞り:F4
露光時間:20秒

画面上で見ると少し暗く見えますが、実際のプリントはもう少し明るく見え、空と煙、山肌と森のコントラストのメリハリがありながらディティールも分かり、見栄えのいいプリントになりました。

初めてでしたが、満足する仕上がりになりました。

最後に参加者皆でプリントを鑑賞して、設定や写真による出来栄えの違いを確かめ、ワークショップは終了。2時間のワークショップでしたが、あっという間に時間が過ぎていきました。

参加した感想

まず、機械を操作することや設定を作り上げていくこと、現像処理をすることなど、全て自分の手で行うことができるので、その過程一つ一つがとても楽しかったです。

そして、最終的には(時間さえあれば)自分の思い通りの結果まで設定を追い込むことができるので、仕上がりにも満足できますし、仕上げた写真に愛着が沸きます。

お店に依頼してプリントしてもらうのとはまた異なる楽しみ方ができるなと思いました。

一方、2時間で2枚のプリントしかできなかったように、最終的なプリントを出すのに、非常に時間がかかります。(慣れるともっと早くはなると思いますが)

多くの枚数をこの方法で自分でプリントするのは難しいと感じました。

また、今回は機材や消耗品を用意していただいたのですぐに取り掛かれましたが、自分で一から用意すると場所も取るし、なにより費用が掛かります。

しちみ
しちみ

今回の印画紙も1枚200円!

初心者の方には、選りすぐりの写真をこういったラボを使わせていただいて、納得いくまで時間をかけて仕上げる、という楽しみ方が一番合っているのかなと思います。

今回プリントを初体験して、これからも継続してやってみたいと思ったので、今後自分でプリントできるレンタル暗室を調べて試してみたいと思います。

3.まとめ

本記事では、
・モノクロ銀塩プリントの流れの説明
・写真美術館のワークショップの内容について
お伝えしました。

モノクロ銀塩プリント、とても楽しいものでした。まだ体験したことのない方、もしお近くで体験できるようでしたら、ぜひこのようなワークショップに参加してみてください。

また、近くに使える暗室がある方も、今回のプリントの流れを見ながらぜひトライしてみてください。

自分でプリントした写真が手元に残るというのは、デジタル時代だからこそ逆に価値を感じます。
今後もフイルム写真を楽しんでいきたいと思います。