「RAW現像」や「レタッチ」は表現の幅を広げ、より自分らしい写真作品に仕上げる行程です。
この工程なしに「撮影して終わり」では、実は写真の魅力を十分に引き出せていないかもしれません。
百聞は一見に如かず、次の写真を見てください。
▼RAW現像・レタッチ前後の写真
違いが一目瞭然ですね。
初心者の方にこそ知ってほしい「RAW現像」や「レタッチ」。当記事では、図解を交えてわかりやすく説明します。
それではカメラ歴15年でフォトマスター1級のしちみがお送りします。
1.RAW現像とは素材を調理すること
RAW現像とは、素材(RAW画像)を料理(JPEG画像)に調理(変換)することです。
RAW画像とJPEG画像の違いは次のとおりです。
RAW画像
- 料理する前の素材のようなもの
- 専用ソフトでないと画像として見れない
- JPEGに「調理」する必要がある
- 「調理」のことを「現像」という
加工性 | |
ファイルサイズ | |
情報量 |
JPEG画像
- 完成した料理のようなもの
- 加工されているのでそのまま表示できる
- 完成した料理なので加工耐性が低い
- 圧縮されておりファイルサイズが小さい
加工性 | |
ファイルサイズ | |
情報量 |
撮影からJPEG画像へ変換するまでの流れを説明します。
カメラは光を集め、デジタルに変換して画像として出力します。
その出力した情報をそのまま全て記録したのがRAW画像です。全ての情報を持っているので加工性が高く、その分ファイルサイズも大きいです。
一方、なじみのあるJPEG画像は、RAW画像を圧縮し、情報量を減らして扱いやすくした形式です。
情報量が減っているので、後からの加工耐性は低いのですが、ファイルサイズが小さいのが特徴です。
ミラーレスカメラα7IVで撮影した次の画像ファイルサイズを、RAWとJPEGで比較してみます。
RAW | JPEG | |
ファイルサイズ | 32.8MB | 5.2MB |
RAWは1枚で32.8MBものファイルサイズです。
RAW現像とは、カメラの出力したRAW画像を撮影者が自ら現像ソフトで処理をして、JPEG画像にすることです。
その過程で、次に説明する「レタッチ」も併せて行います。
2.レタッチとは料理の味付けを変えること
レタッチとは料理(画像)の味付けを変える(加工して好みの画像にする)ことです。
加工には主に、次のようなものがあります。
- 明るさを変える
- 色を変える
- シャープさを変える
- 画像の範囲や傾きを変える
レタッチはRAWでもJPEGでも行えますが、RAW現像と同時に行うことが多いため、RAW現像とレタッチは同じ意味のように扱われることもあります。
レタッチに向いているのはRAW画像です。RAW画像の方が情報量が多いため、加工耐性が強いからです。
JPEGもレタッチできますが、元々の情報量が少ないので、加工しすぎると、ノイズが増えすぎたり不自然な境界線が見えたり(バンディング)と、画質が悪くなります。
▼ノイズが乗り過ぎた例 ノイズのせいでザラザラして見える
▼バンディングの例 空に不自然な線がいくつか見える
綺麗な画像で残すためには、RAW現像とレタッチを一緒に行うのがおすすめです。
3.RAW現像・レタッチのメリット
RAW現像・レタッチのメリットは次の5つです。
それぞれ解説します。
初心者から一歩抜き出る
RAW現像、レタッチをすると、写真が見違えるように綺麗になります。
JPEG撮って出しだと、ちょっと暗かったり、色が地味だったりする写真も、レタッチすることで鮮やかでハッと目を引く写真に仕上げることができます。
後からレタッチするという武器を手に入れることで、写真がうまくなったように感じ、初心者から一歩抜け出した感覚になります。
表現の幅が広がる
レタッチは単に写真をきれいにするだけでなく、自分の表現したい仕上がりに持っていくことができます。
空の青さを強調して鮮やかに仕上げたり、都会の夜景の精緻さを表現するためにシャープに仕上げたり、人の柔らかさを表現するためにソフトに仕上げたり。
自分の表現したい意図にそって、表現の幅を広げることができます。
SNSで共有し世界が広がる
自分だけの写真に仕上げることができると、他の人に見せたくなります。
今やTwitterやinstagramなどのSNSで共有される写真の多くが、RAW現像・レタッチされたものです。
賞賛を受けることで交流がうまれたり、写真への関心が増し、世界が広がります。
北海道、函館。 pic.twitter.com/3ehWCAgljz
— ふぁらお (@Pharao444) January 27, 2023
レタッチの仕上がりを考えて写真を撮れるようになる
レタッチに慣れてくると、写真を撮るときも仕上がりを意識して撮れるようになります。
例えば、明暗差のある場面で、「後からレタッチで暗い部分は持ち上げればいいから、明るい部分が白飛びしないように明るさは抑えめで撮ろう。」とか、遠くの小さな鳥でも「後から切り出せばいいので、ひとまずピントに集中して撮ろう。」などです。
レタッチを知ることで、従来なら撮影を諦めるような場面でも、後からレタッチすることを前提にシャッターをきっておけるため、撮影機会が増えていきます。
撮影とレタッチを組み合わせて仕上げる、と考えるといいでしょう
写真が楽しくなる
最終的にはすべてがここに集結します。
RAW現像やレタッチを取り入れることで、初心者からステップアップすることができ、写真がより楽しくなります。
自分だけのこだわりの作品に仕上げることに楽しさを感じ、それを共有して認めてもらうことでもより写真が楽しめるようになります。
写真やカメラの楽しさを広げてくれるのが、RAW現像やレタッチです。
4.RAW現像・レタッチのデメリット
RAW現像・レタッチのデメリットは次の3つです。
詳しく解説します。
データ量が増え容量を圧縮する
RAW画像は全てのデジタル情報を持っているため、データ量が大きいのが特徴でした。
RAW画像で連写していると、すぐ10GB、100GBの容量になってしまいます。
例:α7IVだとRAW画像は1枚32MBくらいなので、100枚で3.2GB、1000枚で32GBものデータ容量。
そのため、RAWで撮影する際には容量の大きなSDカードやHDDが必要です。
RAW撮影でもしっかり使えるおすすめのSDカードはこちらの記事を参照ください。
保存用のHDDは、コスパがよく、Amazonでの評判もいいこちらがおすすめです。実際に使っていて満足しています。
こだわりすぎるといくらでも時間を使ってしまう
レタッチはいくらでも細かい調整ができるため、仕上がりに拘り過ぎるとすぐに時間を消費してしまいます。
時には時間をかけて頑張って調整したものの、どうしても仕上がりに納得できず最初からやり直したくなることもあります。
そうするとさらに時間を費やしてしまい、レタッチがだんだん面倒になってきます。
おすすめは、毎回必ずポイントを決めて調整し、細かいところにあまりこだわり過ぎず、ちょっと物足りないくらいかなというところで完成させることです。
加工しすぎて不自然になる
これもレタッチに慣れてくると陥りやすい罠ですが、より綺麗にしたい一心でついつい加工しすぎて不自然になってしまいがちです。
▼彩度を上げすぎて鮮やかになりすぎた例
あえて表現のひとつとして不自然さを出すこともありますが、レタッチの基本は物足りないくらいで抑えておくのがおすすめです。
5.まとめ:RAW現像・レタッチを知ると表現の幅が広がる!
この記事では、次の2つをご紹介しました。
- 写真RAW現像・レタッチとは
- 写真RAW現像・レタッチのメリットデメリット
RAW現像やレタッチをできるようになると写真表現の幅が広がり、撮影がより楽しくなります。
JPEG撮って出しの写真に満足できなくなったり、SNSに投稿されているようなエモい作品を自分でも作ってみたくなってきたら、RAW現像やレタッチの始め時です。
このサイトでは、初心者におすすめのRAW現像・レタッチソフトや、基本的なやり方を記事にしています。
ぜひ併せてご覧ください。